|| freudig / PIXY's side
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相棒は滅多に笑わない。 本人からすれば笑っているのだと思うが、せいぜい目を少し細めたりクスッと口元を緩めるくらいのものだ。感情を表に出すことが少ないというか、元々が静かな性格であるらしい。他の傭兵たちのように表情を崩して大笑いすることはない、酒が入っていてもだ。 その相棒が、いま俺の目の前でニヤリと笑っている。本当に楽しそうに。 原因は…俺のアホ面だろう、たぶん。 相棒は声を出すことができないために、俺と会話をするときには筆談もしくは掠れた息の音を声代わりにして言葉を伝えている。が、俺にとって後者がどうもよろしくない。コミュニケーションの方法それ自体が悪いというわけではなくて、相棒の“言い方”がいちいちセクシーだから困るんだ。 今俺に伝えた言葉だってそうだ。お前、耳にわざと息を吹きかけてるだろう?だいたい、涼しい顔して何てことを言いやがるんだ、俺は自分の顔が熱くなるのを感じずにはいられなかった。想像もしなかった返答に思わず訊き返す。 「相棒…それ、本気で言ってるのか?」 相棒は笑ったまま、片眉を上げて「だからどうした?」とでも言いたげに俺を見返してくる。切れ長で、目尻の睫毛が長い二重の目。ステンドグラスのような青灰色の瞳。 …ああ、ダメだ。この瞳に見入られると何もかも見透かされている気分になる。はっきり言って俺は男に興味はない、だがお前の瞳とその不思議な雰囲気に引きこまれると、お前に触れずにはいられなくなるんだ。率直に言えば「美しいものに触れてみたい」ということなんだろう、宝石や美術品に対して抱く感情と同じだ。 言い訳がましいがこれは本当なんだ、だから俺はお前を抱いたんだ。 ―組み敷かれるのは嫌だと相棒は言う。何故だと問えば、切られたときのことを思い出すから、と。酔っていたとはいえ、相棒のトラウマを穿り返して無理やり身体を繋げてしまうほどには理性を失っていなかった。しかし、かと言って欲求を押さえこむにはすでにテンションが上がりきっていて…結局、俺は相棒をうつ伏せにし腰を突き出させるという酷く淫猥な体位で抱いた。俺の身体の下で、相棒がシーツを握り締めて耐えていたのは快感だったと思いたい。相棒が首を捩るたびにちらちらと見える喉の傷が、妙に艶かしくて堪らなかった。 ただ。この傷がなかったら、相棒が声を失うことがなければ出会うこともなかったのだと思うと、何とも形容しがたい気分になった。 こいつは、どんな声をしていたんだろう。どんな声で、俺の名を呼んだのだろう― と。突然耳に入ってきた音に瞬時にして現実に引き戻された。見れば、相棒がくっくっと喉を鳴らして笑っている。そんなに俺の面がおかしいのかお前、失礼な奴…と思えば、自分の顔がだらしなく(それはもう収集がつかないほどに)崩れているのに気が付いた。妙なことを思い出したせいだ、心の中で舌打ちする。が、したところで崩れきった表情を取り繕うのは不可能だ。とりあえず笑って誤魔化すことにする。まあ、バレてるだろうが。 相手が相手、ということはさておき、行為を巧いと言われて悪い気はしない。相棒のセリフが冗談だったとしても、嫌ではなかったとわかれば嬉しくて笑ったって構わない、よな?何だかくすぐったい気分になる。このさいだ、抱きついても文句は言われないだろう。ああそうだよ、嬉しいんだよ俺は。悪いか。 どうにでもなれ。 「…お前ってやつは!」 ------------------- ううーん。 |